本当の本当の栄養学

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超加工食品って何?

1日500kcal多く食べさせる設計の話

2026.08.30/管理栄養士 菅原さち

結論から書きます。超加工食品は「体に悪い成分が入っている食べ物」というより「気づいたら多く食べてしまう設計の食べ物」です。同じカロリー・同じ栄養素構成で比べても、超加工食品の食事だと人は1日あたり約500kcal多く食べた、という実験があります。悪者はだいたい成分表の中ではなく、食べる量を決めている脳の側で起きています。

エビデンスの強さ:中(厳密に管理された入院実験が1本ある。結果は非常にはっきりしているが、20人・2週間という規模で、なぜそうなるかの仕組みはまだ確定していない)

そもそもの定義

超加工食品(ultra-processed food)は、ブラジルの研究チームが作ったNOVA分類という枠組みの第4グループです。おおざっぱに言うと、家庭の台所にない材料(乳化剤、香料、加工でん粉、たんぱく加水分解物など)を使い、工業的に組み立てられた食品を指します。菓子パン、スナック菓子、カップ麺、清涼飲料、多くの冷凍食品やソーセージがここに入ります。

「加工食品=悪」ではない点は先に強調しておきます。缶詰のトマトも冷凍野菜も納豆も加工食品ですが、NOVAでは超加工に入りません。切り分けの軸は加工の有無というより「工業的に食欲を設計されているか」です。

20人を閉じ込めて測った実験

2019年、アメリカのNIH(国立衛生研究所)でKevin Hallのチームが行った実験は、この分野で一番引用されています(Hall et al., 2019)。

20人の成人を研究施設に4週間住まわせて、2週間ずつ、超加工食品中心の食事と、ほぼ未加工の食材で作った食事を両方経験してもらいました。ここが肝心なところですが、提供された2種類のメニューは、カロリー、糖質、脂質、たんぱく質、食物繊維、塩分がそろえてあります。そして「好きなだけ食べていいし、残していい」というルールでした。

結果、超加工食品の2週間では1日あたり平均508kcal多く食べ、体重は0.9kg増えました。未加工の2週間では0.9kg減りました。同じ人が、です。

参加者に「どちらが美味しかったか」を聞くと、両方の食事の評価に大きな差はありませんでした。美味しいから食べすぎたわけでもない、というのがこの実験の不気味なところです。

美味しさと「手が止まらない」は別物

脳科学の側にはこれを説明できそうな知見があります。ミシガン大学のBerridgeらの研究で、快感を感じる仕組み(liking)と、欲しくなる仕組み(wanting)は脳の中で別の回路だと分かっています。ドーパミンが担当しているのは後者、欲しさの側です。

「大して美味しいと思っていないのに、袋が空くまで手が止まらない」という経験は、この2つの回路のずれとして説明できます。超加工食品は、糖と脂肪の比率、食感、食べる速さが上がる柔らかさなど、wantingを押す条件を高密度で備えています。意志が弱いから止まらないのだとしたら、施設に閉じ込められた20人がそろって500kcalずれる説明がつきません。

弱点も正直に

この話の限界も書きます。

Hallの実験は20人・2週間・入院環境です。結果の大きさと設計の厳密さは群を抜いていますが、日常生活で何年も続くかは別の問いです。また、500kcalの差を生んだ犯人が、加工そのものなのか、エネルギー密度なのか、食べる速さなのかは、まだ切り分けの実験が続いている最中です。

NOVA分類自体にも批判があります。第4グループの中身が雑多すぎて、菓子パンと具沢山の冷凍食品を同じ箱に入れるのは乱暴だ、という指摘は栄養学の中でも根強くあります。日本の食卓だと、どこまでを超加工と数えるかの線引きは正直まだ揺れています。

「誰にとって・どの量で」も添えておきます。超加工食品をゼロにする必要はありませんし、共働きや育児中の生活で冷凍食品を捨てたら食事そのものが崩壊します。問題になるのは、飲み物と間食と主食の大半が超加工で埋まっている状態です。

じゃあどうするか

全部やめる計画は立てないでください。上の#2で書いた通り、厳しい禁止ルールは破れた瞬間に反動を連れてきます。

順番だけ決めるのが現実的です。効果が大きい順に、甘い飲料、菓子パンとスナック、その次にやっと主食系。そして「やめる」よりも「置き換える」で考えます。飲み物を無糖に替える、スナックの買い置きを果物やナッツに替える。買い物の段階で決めてしまえば、家の中で意志力を使う場面そのものがなくなります。

一言まとめ

超加工食品の問題は成分の毒性より「500kcal多く食べさせる設計」。ゼロを目指さず、飲み物と間食から置き換える。

参考文献

  • Hall, K. D., et al. (2019). Ultra-processed diets cause excess calorie intake and weight gain: An inpatient randomized controlled trial of ad libitum food intake. Cell Metabolism, 30(1), 67-77.
  • Monteiro, C. A., et al. (2019). Ultra-processed foods: what they are and how to identify them. Public Health Nutrition, 22(5), 936-941.
  • Berridge, K. C., et al. (2009). Dissecting components of reward: ‘liking’, ‘wanting’, and learning. Current Opinion in Pharmacology, 9(1), 65-73.

研究が更新されたら書き直します。指摘は歓迎です。

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